中国語歌詞
日本語訳詞
☆概要
知識青年歌曲には国策的なものと、知識青年たちが勝手に作ったものがある。前者は往々にして一本調子なメロディーと、何回も聴いたことあるような歌詞であるため情緒にとぼしく、後者のほうがリアルな知識青年たちの心情を描いているため聴き応えがあるものだ。
ただし、そんな官製ソングの中にもちゃんと名曲があるのも事実で、たとえばこの曲なんかがそうだと言ってよいだろう。歌詞は「革命」、「毛主席」、「共産党」などの"いつもの"だからちょっと食傷気味ではあるが、「宝島」の地勢にちなんだワードも出てくるためある程度の新鮮さを感じながら楽しむことができるだろう。
もともとは曲名と同じタイトルの映画の主題歌。歌詞で描かれている情景と同じように、青年開墾隊員たちが汗水たらして「宝島」を開墾!という商業主義的映画に染まった我々にはあまりそそられない内容のようだ。
ちなみに「宝島」というサカナクションのあの名曲を連想してしまう単語が指すのは海南島のこと。あまり良く知らないので調べてみたら「中国のハワイ」なんて別名もあるようだ。「ほぉ、なかなか風光明媚なところらしい」と思いを馳せていたら検索窓のサジェストに「海南島 汚い」という中華感あふれる形容詞が出てきてガックリしてしまった。
せめてもの救いはこの曲の美しい旋律が「海南島は汚い」という事実をしばし忘れさせてくれることだろう。前半部では海南島の美しい自然や毛沢東思想に対する敬意が感じられる伸びやかな曲調となっているが、「稻海翻金浪~」からの部分では明らかにリズムが変わり、海南島を開墾していこうという固い意志や毛沢東思想で勝利前進していこうという未来を見据えるものへと視点が変わっているように感じられる。常時アクセル全開のサビ!サビ!サビ!的歌曲がしばしば見られる紅歌において、緩急をつけただけでこんなにも良い曲になるんだぞ、ということを教えてくれる金曲。
あまり作者のオリジナリティを出すと、どの階級に属しているのか詰問されがちなる紅歌のことだから歌詞の既視感はしょうがない。かろうじて「稻海翻金浪 胶林遍山岗」が海南島(南方)らしさを醸し出しているが、それ以外の部分は別に海南島じゃなくても通用しそうな歌詞といえる。
歌詞は、われら紅歌兵のバイブルである『战地新歌』に掲載のものを引用した。多分そちらがオリジナルバージョンだと思うのだけれども、百度百科にはべつのバージョンの歌詞が掲載されている。不思議なのは百度のほうに「文化大革命 战歌传四方」といういかにも「文革版」らしい歌詞が掲載されていることだ。これだけ見ると、文革版(百度)→現代版(战地新歌)という経緯があったと思いがちだが、『战地新歌』だって文革の真っ只中に出版されているため、その可能性はないだろう。すると「文革後に文革版ができた」という珍妙な事態がおきたか、「勝手に改変されたバージョンを掲載した」という可能性に絞られるだろう。どこを探しても百度百科と同じ歌詞を掲載しているサイトが見つからない(引用と思われるものはあるのだが)のも謎に拍車をかけている。さらなる情報を求む。
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