中国語歌詞
日本語訳詞
☆概要
もしかして:
ラストエンペラーで紅衛兵が歌ってたやつ→「革命造反歌」
「红卫兵 红卫兵 文化革命当尖兵~♪」で始まるかなりマイナーな紅衛兵ソング→「红卫兵之歌」
数多ある紅衛兵歌曲の中でも二番目くらいに有名なのがこの「红卫兵战歌」だろう。本当は紅衛兵ソングなんて数百曲くらいあったとは思うが、音源として今日まで伝わっていて、聴こうと思えば誰でも聞けるという条件を満たしたものは甚だ少ない。
そんな生き残りたちの中で一番有名なのが「革命造反歌」だろう。それ自身が帯びる攻撃性とか特異な音楽的センスも相当オモシロい要素もさることながら、ごくごく初期に、ほぼ初めて作られたと言って良い紅衛兵ソングであることも、その知名度に影響している。当時の紅衛兵を代表する歌曲ゆえに、その時代の描写を含む映画「ラストエンペラー」にまで出演(しかも忠の字踊り付き!)している。
ただし、その影に隠れがちなこの「红卫兵战歌」も名曲だ。狂ったようにドラやチャルメラのような音が鳴り響くお祭りのような雰囲気の中、速めのテンポで物騒なことを歌っていくというのが文革初期の熱気を凝縮させたようでクラっときてしまう。
こうした音楽の前で「红卫兵之歌」はどうしても霞まざるを得ない。歌詞も一番当たり障りがないし。全年齢版紅衛兵ソング的な。
作詞作曲は不明であるが、ネット上の、歌詞を掲載した一部のサイトでは李江中同志という方が創作したと書かれている。しかし、なんの出典も示していないし、中国のそういうサイトは往々にしてテキトーなことが多いので佚名のままとした。
さて、そんな誰が作ったかわからぬ曲だが、誰かにせっつかれながら作りでもしたのか、やたらと速いテンポでピョンピョン跳ねているような独特の曲に仕上がっているのが面白い。おそらくこの曲を作ったのは、他の紅衛兵ソングと同じように紅衛兵のうちの誰かではないだろうか。その人が文革の熱気に中てられて功を焦るあまりに、作った曲も特急級になってしまったのではないかな。もしそうだったとしても全く悪いことではなく、むしろ当時の紅衛兵たちに共通する気概を図らずも体現した労作と言えるだろう。
ハイスピードの曲に彩りを添える歌詞にはクチの悪い罵詈雑言と激しい表現が並ぶ。「害人虫」なんていう表現はホント好きだよね~。これは「害人・害虫」を合わせたものではなく、「人を害する虫」という意味らしい。つまり紅衛兵にとって反動派は人ですらない。そしておまけに「右派全肃清」なんていうスターリンみたいな表現まで出てくる。過激すぎ。
そういうヘンテコリンな部分以外に目を引くのは、なんと言っても「踏着前辈革命的路 时代重任来担承」という部分だろう。小説家・梁暁声はその著書『ある紅衛兵の告白』の中で、文化大革命中の紅衛兵がなぜあんなにも熱中し、暴れまくったかについて考察している。それまではただ毛主席ら英雄的革命家たちの事績を褒め称えて受け入れるしかできなかったが、文革の到来とともに、自分たちも英雄になれるチャンスが到来したという状況と、平凡をなにより嫌う青年という年齢がそうさせたと説いているのだが、これはけだし道理のあることだろう。
詳しい考察は個々では行わぬが、前掲の歌詞にはそういった気概が十分に込められているような気がする。他の有名な紅歌ではたとえば「毛主席万歳」や4つの偉大、その他諸々の称賛はゴロゴロしているけれど、「英雄たちの後を継ぎ 時代を変えてゆこう」というところまで踏み込んだ表現は比較的珍しいのではないか。特に「踏着前辈革命的路」という過去の革命家たちの功績まで引っ張り出しているのは結構攻めている。捉えようによっては「俺たちがこの時代の主役だぜ!」ということにもなりかねない。そうすると毛主席たちは脇役か、前作主人公的ポジションになっちゃうが……私の考えすぎだろうか。
そんな紅衛兵たちの功名心や攻撃性やなんやらがいっぱい詰まった魅力ある歌曲だと思う。ぜひ他の紅衛兵ソングともに聴いて比較し、味わってみてはいかがだろうか。短い歌曲群だけども、曲調・歌詞が濃いから激しく胸焼けすることは言うまでもない。
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