中国が革命の国ではなくなってしまったことは社会主義市場経済や先富論といった小難しく、かつ毛主席時代への懐かしさと鄧小平への敵愾心が同時に湧き上がる単語を使わずとも、「同志」という単語の変遷を見れば容易に説明できる。
今の教科書では見ることはないが、古い教科書では普遍的な二人称代名詞として「同志」が使われていた。これがなかなか便利、なにせ今の時代は先生、女士、叔叔、阿姨、伯伯、太太、小姐、同学、老师……と山のように代名詞が存在し、その人の年齢・地位に合わせて使わなければ失礼に当たるというのだからめんどくさいことこの上ない。しかも小姐なんかはあまり使われなくなってきたのに一部教科書では現役だから困る。その点、「同志」は相手が主席であろうと紅小兵だろうと全く問題なく使える唯一の単語であったのだ。
この単語が使われなくなった正確な時代はわからぬが、1990年代にはもう殆ど使われることはなくなったようである。現代に至ってはもうニュース報道や党関係の出版物・ウェブサイトでお偉方のご芳名の後ろにくっついているのを見る程度。
ところがここ最近は別の意味での「同志」が登場しているようで、「同性愛者」を表すらしい。たしかに同じ志を持つ人々だから、けだしピッタリとハマる単語かもしれない。でも、そっちの意味が浸透してしまうと、私のような未だに同志呼称を堅持し続けている変人がより白眼視されることになるから諸手を挙げて賛成はできない。ただでさえ「同志なんていつの時代の人だよ笑」と思われているのに意味が変わって「お~い!ゲイ~!」と呼びかけていることになれば苦笑いの白眼視だけでは済まないかもしれぬ。
どうしてこんなことを考えたかというと、ここ最近、日本共産党からオルグを受け続けており、ついにこのあいだ入党申込書をもらったのだが、そこに「同志」という今や見つけようとしても見つけられない希少な表記があったから。ただ、別に入党するとも申込書をくれとも言ってないのだが……
こちらが頼んでもないのにくれた入党申込書なるもの。右下の部分に「同志」の文字が見える。左下の書式は申請中のものだが、そこでは〇〇さん呼称で、いざ入党したら晴れて「同志」と認められるというのはなかなかにアツい。入らないけど。
そうは言っても中国は共産党が執政している。同志という単語を使ったとしても何もおかしなことはない。一方の日本は資本主義国家、だからこそ同志なんて単語を見ることはほとんどない。あるとすれば同志社大学くらいだろう。そんな中でわざわざ同志と表記しているのはやはり共産党の意地を感じさせる。
同志表記にも驚かされたが、もっと注目すべきはその構成だろう。この書面は次の3つから構成されている。
1.個人の入党申請(上部)
2.細胞(今は支部っていうの?)が上位機関に「こいつを入党させますよ」と上申する書面(左下)
3.そして上位機関が承認したら志願者に渡す承認証(右下)
それぞれはあって当然の書式なのだが、それを一枚にまとめているのはナゼ?意を決して入党するのだから、カラーのA4用紙に「張三同志 あなたの入党を熱烈歓迎!!」ぐらいに書いてくれないと気分が乗らない。共産党員になるメリットがほとんどない今日このごろ、せめて新規入党者たちにはこんなショボい紙切れ右端だけではなく賞状クラスの用紙とかメダルで記念してやればよいのでは。
この用紙からもにじみ出ている通り、日本共産党は入党するメリットが少ない気がする。そんな事を言うと「実利目的で入党するやつは許さん!」とか言われそうだが、入党する気のない中国共産党支持者とし発言させていただくので悪しからず。
「4つの大切」という中国のスローガンっぽい響きの用語があるのだが、その中でしんぶん赤旗の購読と実収入の1%を納めることが「奨励」されている。赤旗(日刊と日曜版)が月4,500円×12=54,000円、年収の手取り額が300万としたら30,000円の計84,000円/一年を党に献上しなければならない計算だ。高いよ~。そこまで払って同志になりたいか?と聞かれるとう~ん、である。他にも永年党員などの表彰があるそうだが、別にメリットはないそうだ。強いて云えばバッヂをもらえるくらい。党員にそこまでの貢献を強いておいて某フワちゃんはすっかり赤い貴族と化しているのも大変気に入らない。
となると入党したら出世につながるかもしれない、お金儲けにつながるかもしれない中国共産党のほうが良いのは明らかだ。それにあっちは毛主席や習主席がいらっしゃる。志位委員長ファンクラブに入る理由もない。
ちなみに日本共産党の方に「中国共産党ってどうなんですか」と伺ったところ、「アレは共産党とは呼べません!」と返された。我が母なる党と同志たちを愚弄した罪は重い。
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