数年前まで、長いことガラケーにこだわり続けてきた。電話とメールができればそれで充分であったし、キャリア共の搾取の餌食になりたくなかった。そしてなにより息をするかのような気軽さでLINEなどをポコポコと送られるのがシャクだったからだ。
しかし紅衛兵驚く莫れ時の変わり改まるを。华为小米、これ格安。手頃な電話を手に入れて格安Simを契約すればそれほどボッタクられることはなくなった。加えて、電話とメールだけの端末だと生活が不便であることに疑いようはないし、そして何より、私に対して気軽にLINEを送ってくれる友達などいなかった。スマホにしてみても良いのかもしれない。
やると決めたら犠牲を恐れず万難排してスマホを掴み取らねば!そしてそのメーカーは我が心の祖国が誇る华为しかない。一路ナントカモバイルに向かい、言った--すみませ~ん、华为の携帯は取り扱ってらっしゃるでしょうか~?
「??????????あっ、ファーウェイですか!あ~すみませんウチではちょっと……」
华为はファーウェイか
私が探しているのは华为であって、ファーウェイなるモノではない。しかしどうやら多くの日本人にとって「アメリカとバトルを繰り広げている中国最大級の携帯メーカー」といえば「ファーウェイ」らしい。そんなのはおかしい。だって华为(hua2wei2)の発音は、どちらかと云うと「ホア↑ウェイ↑」でこそあれ、「ファーウェイ」ではない。それだと「fawei」じゃあないか。
同じように小米などもXiao3mi3ではなくシャオミだそうだ。発音は置くとして、なぜ同じ漢字文化圏なのにカタカナに転写するのだろう。小米はその名前から、農業の会社と間違えられたというオモシロイ故事を持っている。だがカタカナではそのへんの経緯が掴みにくい。それこそまさに乏味(fa2wei4)だろう。
さて、そうした「なんと呼ぶか問題」であるが、別に中国系企業だけの悩みではない。たとえばApple。これを「アポー」と読むのは勝手だが、間違いなく意識高い系認定をされてしまうだろう。そしてSamsung。これは漢字表記すると「三星」、三の発音はサムでほぼ合っているが、星の発音は朝鮮中央テレビのおばさんが「クァンミョンソン(光明星)!!!」と怒鳴っているように「ソン」。だから正しくは「サムソン」……などなど挙げていけばきりがないほどだが、当サイトは中国に関するそれであるから分析は割愛する。
さて、こういうものはネイティブの発音ではこうだ!いや、日本における多数派の発音が正しい!といったような結論の出ない議論に終始しがち。だから本人たちに聞いてさっさと解決してしまおう。
ファーウェイ/HUAWEI
ファーウェイの日本語ホームページ(https://consumer.huawei.com/jp/) |
华为はうるさいくらいにファーウェイファーウェイと言っている。本人たちがファーウェイという呼称を使っている以上、電話を求めて「ホア↑ウェイ↑ください」は間違った発音ということになろうし、日本での「华为」表記は誤記とされるだろう。考えてみれば当たり前だが、Appleが公式サイト上では一言も「アップル」と表記しないことで「アポー」の可能性を残していることを見習ってほしい。そうファーウェイと言い切ってしまっては中国語における正しい発音を志向している私がバカみたいではないか。
Xiaomi
Xiaomiのホームページより(https://www.mi.com/jp/) |
ZTE
ZTEジャパン㈱のホームページより(https://www.ztedevices.com/jp/about_zte/) |
おまけに中兴通讯も。ここは一貫してZTE表記を使用。「Zhongxing tongxun」のアクロニムであるから、「ヂョン→シュィン↓トン→シュィン↓」と言っても問題はないだろうが、通じる人はいないだろう。かといって「中興通訊」では田舎の中小企業感あふれるためブランドイメージが台無し。「ゼットティーイー」で我慢するのが無難か。ちなみに、予算がないのかやる気が無いのか、ZTEホームページはフォントが中国のモノのままである。「海」という漢字を見れば、違和感に気づくだろう。いちおうIT系の企業なのにホームページがこれってどうなのよ。
おわりに
さて、大抵の人にとっては至極どうでもいい情報をざっと調べてまとめ上げてみた次第だが、個人的にはファーウェイの対応にがっかりした。今や国際的な大企業に成長したファーウェイが日本に及ぼす影響は見逃せないものがある。そうした企業が率先して(中国語として)間違った発音を社名としているのはなんともやるせないことである。ただでさえ日本人は「谢谢(sheishei)」、「你好(ni1hao1)」、「再见(ザイジェン)」などと中国語に全く無理解であるのに、さらに「华为(fawei)」というまちがった語彙を増やすのはけしからん。
さて、华为以外の中国企業におかれても世界進出にあたって西洋風のアクロニムや通称を考えておいでのようだ。漢字を使わぬ西洋の人士にとっては受け入れやすいが、日本人にとっても同じとは限らない。例えばICBCだ。これはある企業の英名アクロニムだが、それよりも中国工商銀行と言ったほうが誰でも分かることは疑いようもない。かといって安徽海螺水泥のような漢字の羅列を見ても一体何の企業なのか、そもそも会社なのかすら理解できない。そういう観点から言うと华为は難しい立場にある。「かい」や「はなため」ではどうも締まらない。かといって「ホアウェイ」では発音にこだわりすぎ。着地点として丁度いいのがファーウェイだったのかもしれない。
こうした同じ漢字文化圏ゆえの悩みは未だ解決途上にあるといえるだろう。それは今日取り上げた企業の名称にとどまらない。たとえば北京。これを我々はペキンと呼ぶが、それは大昔の発音のままである。一方の上海は現代の発音を基にしている。しかし今話題の武漢はぶかんとよばれウーハンではない。中国の存在が嫌でも目につくような情勢になってきたし、「きんにっせい」が「キムイルソン」に、「支那」が「中国」なったことを鑑みれば、こうしたちぐはぐな状況はいつか解消されるかもしれない。ちなみに我がサイトは「もうしゅせきファンクラブ」でも「Mao2zhu3xi2ファンクラブ」でもどっちでも没问题。
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