毛主席畅游长江 | 毛主席、長江を遊泳なさる

2020/12/26

1960年代 紅歌

中国語歌詞

毛主席暢游長江
词:佚名 曲:佚名 1968年?
 长江上升起了红太阳 伟大的毛主席畅游长江
 毛主席 毛主席 您拨开波涛 乘风破浪
您神采焕发 满面红光 您有无穷的力量
您是这样健康 这就是我们最大的幸福
这就是革命人民的愿望
万岁万岁万万岁毛主席
革命人民跟着您破浪向前进
革命人民跟着您破浪向前进

日本語訳詞

毛主席、長江を遊泳なさる
作詞:不明 作曲:不明 1968年?
長江に紅い太陽昇る 偉大な毛主席が長江を遊泳なさった!
毛主席 あゝ毛主席 波掻き分け風に乗る そのお顔は
真紅の血潮で火照り 無限に力が湧いているよう
主席が健康であらせられること
それこそ我らの最大の幸福
全革命人民の願いです
万歳万歳万々歳毛主席!
我ら革命人民 主席とともに波濤衝き前へ!
我ら革命人民 主席とともに波濤衝き前へ!


☆概要

全世界人民の心の真紅の太陽、全世界無産階級の偉大な領袖であらせられる毛沢東主席の誕生127周年紀念企画その2。YouTubeにいつも素晴らしい映像とともに紅歌を上げてくれている同志がアップロードした動画を見て、それに呼応せんとして和訳した。恥ずかしながら、この曲を聞いたことはなかったのだが、なるほどいい曲である。あまり歌っぽくない詞は語録歌の趣さえある。文革初期の歌であるはずなので、語録歌の影響を受けていることは当然だが、語録歌ほど無茶な歌い方をしていないところが評価できる。

 

なんじゃこりゃというようなタイトルだが、毛主席が1966年7月16日、実際に長江を泳いだという故事を基にしているため、このようなタイトルが付けられている。泳いだだけで歌が作られるという人生はどうなんだろうかとつらつら考えるが、別にただプライベートで遊びに行ったわけではなく、一応、毛主席流の健在であることの(肉体的にも、そして政治的にも)アピールであった。当時70代のご高齢であるから、流れが急で危険な長江を泳ぐことは一般的に見て不可能に近かったが、それを「ここはワシの家だ」と言わんばかりの態度で泳いだことで国内人民はもちろん、特に海外メディアが驚いたと言われる。これが肉体的な健在のアピール。では政治的な面はといえば、文革発動以来、目立った行動を抑えてきた毛主席が、いきなり長江を遊泳してそれを広く宣伝することで劉鄧グループに対しての反撃と文革深化の狼煙を上げたといえる。

 

そう、反撃開始のアピールとして泳いだ……のだけれども、「泳いだ」という言葉からイメージされる行動とはちょっと異なる。下に貼る動画でご覧いただけるが、アレは泳ぐというより「浮く」とか「漂流する」とかのほうが適合するような気がする。ただし、実際のところは流れが速く深い長江に合っていたようで、時間にして1時間、総移動距離1500メートルものあいだ浮いていたという。尤も、主席のような重要人物を放流するわけにもいかないから護衛が居たのだが、彼らは神経を張り詰めつつしっかりと「泳いで」いたのだから相当疲れたと思う。そんな彼らの真ん中で太鼓腹を水面に張り出した主席が浮いたり回転したり潜ったりしているのはシュールである。

 

主席のスイミングスキルよりも歌の話をしよう。曲調としては上述のように語録歌に似た雰囲気を持つが、それよりももう少し練られているといったところ。サビ的存在が「革命人民跟着您破浪向前进」というのは察することができるけれども、それ以外がごちゃついているのがステキ。音がたくさん上下してまったく歌いづらそうな歌曲ではあるが、それがいかにも当時っぽい空気を醸してさえいる。紅歌の中でもより紅歌っぽい音楽で非常に好ましい。「毛主席 毛主席」の部分に非常に感情が乗っているように聞こえるが、これは曲のおかげというよりも歌手である贾世骏の美声の為せる技であろう。

 

歌詞もいかにもな紅歌といった感じ。 「革命とかそれっぽい成語を入れて……あっあと波濤とか浪とか入れよっか!長江だしな!」という思考が見てきそうな愛すべき歌詞である。また、当時は新聞などの白黒写真かラジオが主流の情報源だったはずだが、「您拨开波涛 乘风破浪您神采焕发 满面红光」など克明な描写のようなものが出来ているのはスゴい。ただ、今の我々のように映像で確認すれば明らかに「拨开波涛」していないのはバレてしまうけどね。

 

この曲は動画説明文には1968年と書かれているが、毛主席がぷかぷかふよふよしたのが1966年のこと。中国の即決性と歌の素朴さから考えるに、二年間も創作に時間をかけたとも思えない。それに66年から68年にかけて驚天動地の出来事が起こったのに、未だに二年前の曲を歌うという可能性も低そうだ。従って、この曲は1966年作と考えるのが妥当ではなかろうか。

☆動画