大路歌(集団作詞バージョン・日本語訳付き)

2021/03/21

1930年代 1970年代 紅歌 労働歌

中国語歌詞

大路歌
集体重新填词 曲:聂耳 1972年?
哼哟咳嗬嗬 咳咳嗬咳 哼哟嗬嗬咳 哼嗬咳哼
我们大家同心干 嗬嗬咳
力量如天 拉起铁滚齐向前 嗬咳哼
铁滚压碎旧世界 嗬嗬咳
修筑大路 创造工农新人间 嗬咳哼
工农弟兄一齐奋战 工农弟兄一齐奋战
推倒三座大山填平苦难的深渊
跟着中国共产党 团结战斗到明天
工农弟兄联合起来 工农弟兄联合起来
披荆斩棘朝前走 革命大路宽又宽
哼哟咳嗬嗬 咳咳嗬咳 哼哟嗬嗬咳 哼嗬咳哼
哼哟咳嗬嗬 咳咳嗬咳 哼哟嗬咳咳

日本語訳詞

大路歌
作詞:集団作詞 作曲:聶耳 1972年?
ヘイ!ヨーヘイ!ホーヘイ! ヘイ!ホーヘイ!
ヘイ!ヨーヘイ!ホーヘイ! ヘイ!ホーヘイ! ……
我ら一つに団結すれば ホーホーヘイ!
天を衝くちから 鉄輪牽いて前へ ホーへイハン!
鉄輪で旧世界を圧し潰すんだ ホーホーヘイ!
大路築き上げ 創り出そう労農の新人間 ホーへイハン!
労農の兄弟 ともに斗おう! 労農の兄弟 ともに斗おう!
 3つの大山突き崩し 苦しみの根源埋め尽くす
中国共産党に従って 団結して斗い朝を迎えるんだ
労農の兄弟 ともに起て! 労農の兄弟 ともに起て! 
イバラの道でもなんのその 革命の大路は広いぞ
ヘイ!ヨーヘイ!ホーヘイ! ヘイ!ホーヘイ!
ヘイ!ヨーヘイ!ホーヘイ! ヘイ!ホーヘイ!……


☆概要

今回紹介するのは聶耳作曲のあの名曲!「大路歌」……を集団作詞で改変したもの。それが改善か改悪かは議論が分かれるところだが、個人的には余計なことをやったなぁ、という感じ。

 

創作年度がよくわからないが、1972年出版の『战地新歌』に掲載されていることからそのとおりだと判断した。元歌の「大路歌」は1934年創作だから、本曲はいわゆる文革版とでも呼ぶべきもののはずだが、その称号にふさわしいだけの紅さがないことが問題だ。確かにそれっぽい単語や共産党と云ったワードが出てくるけれども、決定的なものに欠ける。もともとが傑作なのだから、名人が手がければ魅力を保ちつつ純紅歌になれるポテンシャルがあったのに、なんか下手なんだよな……ゴリゴリの毛主席ラヴを詰め込めば、スルメ曲に化ける可能性もあったと思われるが、中途半端に終わったの感がある。これならば手を加えないほうが良かった。


悪口ばかり言っているが、まだまだあるぞ。原曲は暗いながらも秘めたる明るさと熱さがあった。苔のような不思議な湿っぽさと熱が同居した曲だったのだ!それを陽の下に引っ張ってきちゃあダメですよ。あと、いつも色んな曲の紹介記事で言っているが、視点がよくわからないんだよ。労働者の歌と仮定して、「工农弟兄一齐奋战」なんて言うだろうか?つまり、労働者ならば「農民よ!ともに斗おう!」ではないか?この歌詞では第三者(売れ残りは兵か)が「おい労農!団結しろよ~」と安全地帯から呼びかけている感じがする。結局誰の歌なのよ?

 

ただし、音源で聴くとまあまあ鑑賞に堪えうる。それは歌手がいいからだろう。下に貼るが、歌手はなんと長征組歌で「四渡赤水出奇兵」のメインボーカルを務め、後にマイケル・ジャクソンのビート・イットも歌った(歌わされた)あのおじさん。歌唱力抜群なのでこういう残念な曲でも上質な歌曲になるのだ。


なんかここで曲調を解説すると損した気分になるので大路歌(正統)のほうで解説することにして、歌詞と一部のワードを解説することとしよう。


まず「铁」という単語だが、これは多分「鉄のローラー」という意味だろう。しかし、路盤の締固め用のローラー、星飛雄馬が牽いているようなアレは「子」であり、さんずいではない。「滚」にもローラーという意味はあるにはあるが、サイズがだいぶ違う。大昔の洗濯機に服を挟んで脱水するローラーがあったが、イメージとしてはアレだ。最初は参照した百度百科だけが間違っているのかと思ったが、战地新歌でもさんずいのほう。私が間違っているのか……?とにかく、道の舗装をするのにロードローラーなんてある訳ないから人夫が鉄のローラーで締固めているわけであるが、改変した歌詞だから原曲ほどローラーが重要なものではなくなっている。原曲ではローラーを牽きつつ前進するというストーリーがあるのだが、こちらではよく分からなくなってるので……

 

次の不明ワードは「工农新人间」というなんかSFチックなものだが、これは私もよくわからない。いちおう、「共产主义新人」とか「社会主义新人」というふわっとした概念は当時からあったが、全くのイコールかどうかは分からん。ググってもこの曲以外出てこないから造語かもしれない。


そして「三座大山」。これは「封建主義」、「帝国主義」、「官僚資本主義」の3つの山のこと。愚公山を移すでは2つの山だったが、1948年になってもひとつ増えたようだ。


さて、歌詞だが、特筆すべきことはない。強いてあげれば原曲と同じく、ヘイホーヘイ!という低音の掛け声が良いね!というくらい。あの掛け声のおかげで労働者が重いコンダラ……もとい思い鉄のローラーを牽きつつ前進してくるという情景がありありと浮かんでくる。三座大山という毛主席の最高指示を敷衍した歌詞もなかなかに良い。できれば主席の御名も出してほしかったがね。あと毛主席や共産党というワードには及ばないけれども、労農という題材はテッパンだと感じられる。黒人音楽でマザーファッカーとかゴッドとかをいちいち置くけど、アレと同じで特定のワードを置かないと安定しないのだろう。今回で言えばやはり労農か。


全体的に残念な曲。題材が良かったのだからもすこし頑張ってほしかった。集団作詞とあるが、具体的なメンバーはどなたなのだろうか。優秀な作詞家はすでに改造を受けるために地方へ行ってしまったのだろうか。


☆動画

先述した「四渡赤水出奇兵」のメインボーカルを務めたおじさん。顔がうるさい+歌唱力バツグンとかいう隠れた人気者。サムネイルからしてかなり表情が濃い。