習主席、2021年の新年賀詞を発表なさる

2021/01/01

志在四方山ばなし 習主席 中国語


中国語全文

新华网より引用(http://www.xinhuanet.com/politics/2020-12/31/c_1126934359.htm)

 

   大家好!2021年的脚步越来越近,我在北京向大家致以新年的美好祝福! 

 

  2020年是极不平凡的一年。面对突如其来的新冠肺炎疫情,我们以人民至上、生命至上诠释了人间大爱,用众志成城、坚忍不拔书写了抗疫史诗。在共克时艰的日子里,有逆行出征的豪迈,有顽强不屈的坚守,有患难与共的担当,有英勇无畏的牺牲,有守望相助的感动。从白衣天使到人民子弟兵,从科研人员到社区工作者,从志愿者到工程建设者,从古稀老人到“90后”、“00后”青年一代,无数人以生命赴使命、用挚爱护苍生,将涓滴之力汇聚成磅礴伟力,构筑起守护生命的铜墙铁壁。一个个义无反顾的身影,一次次心手相连的接力,一幕幕感人至深的场景,生动展示了伟大抗疫精神。平凡铸就伟大,英雄来自人民。每个人都了不起!向所有不幸感染的病患者表示慰问!向所有平凡的英雄致敬!我为伟大的祖国和人民而骄傲,为自强不息的民族精神而自豪!

 

  艰难方显勇毅,磨砺始得玉成。我们克服疫情影响,统筹疫情防控和经济社会发展取得重大成果。“十三五”圆满收官,“十四五”全面擘画。新发展格局加快构建,高质量发展深入实施。我国在世界主要经济体中率先实现正增长,预计2020年国内生产总值迈上百万亿元新台阶。粮食生产喜获“十七连丰”。“天问一号”、“嫦娥五号”、“奋斗者”号等科学探测实现重大突破。海南自由贸易港建设蓬勃展开。我们还抵御了严重洪涝灾害,广大军民不畏艰险,同心协力抗洪救灾,努力把损失降到了最低。我到13个省区市考察时欣喜看到,大家认真细致落实防疫措施,争分夺秒复工复产,全力以赴创新创造,神州大地自信自强、充满韧劲,一派只争朝夕、生机勃勃的景象。

 

  2020年,全面建成小康社会取得伟大历史性成就,决战脱贫攻坚取得决定性胜利。我们向深度贫困堡垒发起总攻,啃下了最难啃的“硬骨头”。历经8年,现行标准下近1亿农村贫困人口全部脱贫,832个贫困县全部摘帽。这些年,我去了全国14个集中连片特困地区,乡亲们愚公移山的干劲,广大扶贫干部倾情投入的奉献,时常浮现在脑海。我们还要咬定青山不放松,脚踏实地加油干,努力绘就乡村振兴的壮美画卷,朝着共同富裕的目标稳步前行。

 

  今年,我们隆重庆祝深圳等经济特区建立40周年、上海浦东开发开放30周年。置身春潮涌动的南海之滨、绚丽多姿的黄浦江畔,令人百感交集,先行先试变成了示范引领,探索创新成为了创新引领。改革开放创造了发展奇迹,今后还要以更大气魄深化改革、扩大开放,续写更多“春天的故事”。

 

  大道不孤,天下一家。经历了一年来的风雨,我们比任何时候都更加深切体会到人类命运共同体的意义。我同国际上新老朋友进行了多次通话,出席了多场“云会议”,谈得最多的就是和衷共济、团结抗疫。疫情防控任重道远。世界各国人民要携起手来,风雨同舟,早日驱散疫情的阴霾,努力建设更加美好的地球家园。

 

  2021年是中国共产党百年华诞。百年征程波澜壮阔,百年初心历久弥坚。从上海石库门到嘉兴南湖,一艘小小红船承载着人民的重托、民族的希望,越过急流险滩,穿过惊涛骇浪,成为领航中国行稳致远的巍巍巨轮。胸怀千秋伟业,恰是百年风华。我们秉持以人民为中心,永葆初心、牢记使命,乘风破浪、扬帆远航,一定能实现中华民族伟大复兴。

 

  站在“两个一百年”的历史交汇点,全面建设社会主义现代化国家新征程即将开启。征途漫漫,惟有奋斗。我们通过奋斗,披荆斩棘,走过了万水千山。我们还要继续奋斗,勇往直前,创造更加灿烂的辉煌!

 

  此时此刻,华灯初上,万家团圆。新年将至,惟愿山河锦绣、国泰民安!惟愿和顺致祥、幸福美满!

 

  谢谢大家!


日本語全文

中国国際放送局ホームページより引用(http://japanese.cri.cn/20201231/e96db4f8-14fd-c9c4-57ed-db2db4b9a4c5.html)

 

 同志の皆さん、友人の皆さん

 

 こんにちは!2021年の足音が近づく中、ここ北京から新年に向けた祝福を申し上げます!

 

 2020年は実に非凡な1年でした。突如発生した新型コロナウイルス感染症の流行を前に、私たちは人民至上と生命至上の理念をもって人類の大いなる愛を体現し、一致団結して困難に立ち向かい、感染症に辛抱強く対抗してきました。共に困難を克服する日々の中には、危地へと逆行して遠征する勇壮な姿や、根気強い不屈の守り、艱難辛苦を共にする責任感と犠牲を恐れぬ勇敢さ、互いに見守り助け合う感動もありました。白衣の天使も人民の兵士も、科学研究者も社区(コミュニティ)のスタッフも、ボランティアの人々も各種プロジェクトに携わる人々も、そして古希を迎えた高齢者から1990年代や2000年代以降に生まれた青年たちまで、多くの人々がその人生をもって使命に赴き、真摯なる愛をもって尊い命を守り、水の一滴の力を集めることで偉大な力へと変え、生命を守る金城鉄壁を構築しました。顧みることなく前進した一人一人の後ろ姿、心と手で繋げた一つ一つのリレー、深い感動を与えた一幕一幕の場面、疫病との偉大な闘いの精神を生き生きと示しました。平凡から成し遂げられた偉大な成果です。英雄は人民の中にこそいます。全ての人がみな素晴らしい!全ての感染者に慰問の意を表します!全ての非凡なる英雄たちに敬礼します!私は、偉大なる祖国と人民を誇りに思い、絶えず自らを高めんとする民族精神を誇りに思います!

 

 艱難を前に勇毅は現れ、磨砺を経てこそ玉は成る。私たちは疫病の影響を克服し、感染の予防・抑制における統一的計画と経済・社会発展の面で重要な成果を得ました。「第13次五カ年計画」が円満に終わり、「第14次五カ年計画」が全面的に打ち立てられました。新たな発展構造の構築が加速し、質の高い発展が深く実施されています。我が国は主要経済体の中において一足先にプラス成長を実現させ、2020年の国内総生産(GDP)は100兆元の新たな大台に上がる見込みです。食糧生産については17年連続で豊作が実現しました。火星探査機「天問1号」、月探査機「嫦娥5号」、有人潜水艇「奮闘者」号など科学探査においても重要な突破を実現させました。また、海南自由貿易港の建設が力強く展開されています。一方で、私たちは深刻な洪水災害に立ち向かい、軍と民間の多くの人々が苦難を恐れず、心を一つに洪水に対応して救助を行い、努力を通して損失を最低限に押さえ込みました。私が13の省・区・市を視察した際に目の当たりにしたのは、皆が感染の予防・抑制措置をきめ細かく着実に実施しつつ、一刻を争って生産や操業を再開させ、革新と創造に全力で取り組み、「神州の大地」が自信、自強、柔軟さに満ち、寸刻を惜しんで取り組む生気に溢れる光景です。

 

 2020年は、全面的な小康社会の建設において偉大かつ歴史的な成果を得て、貧困脱却の堅塁攻略戦において決定的な勝利を収めた年でした。私たちは「深刻な貧困の砦」に総攻撃を仕掛け、「最も硬い骨(最も困難な課題)」を噛み砕きました。8年を経て、現行基準における農村貧困人口1億人が全て貧困から脱却し、832の貧困県から「貧困」のレッテルが全て取り除かれました。ここ数年間で私は全国の14の広域特殊貧困地域を訪れました。村人たちの「愚公移山(実直で並外れた根気強さ)」のようなやる気、多くの貧困扶助幹部らの心血を注ぐ貢献が今でも時折脳裏に浮かび上がります。私たちは青山に咬定して放松せず(立てた志をしっかりと定着させ)、地に足をつけて踏ん張り、壮大で美しい村おこしの絵巻を描きあげるよう努め、共に裕福になるという目標に向かって安定的に前進していかなければなりません。

 

 今年、私たちは深センなどの経済特区設立40周年、上海浦東開発開放30周年を盛大に祝いました。春潮湧き起こる南海の渚、きらびやかで美しく変化に富んだ黄浦江の畔に身を置くと、万感の思いに至ります。他者に先行し、先駆けて試験を行った地域が、今や模範となり引率者となり、革新の模索はイノベーションを駆動力とする段階へと進展しました。改革開放が発展の奇跡を生み出しました。今後はより大きな気迫をもって改革を深化させ、開放を拡大し、より多くの「春の物語」を綴っていきます。

 

 「大道は孤独にあらず、天下は一つの家である」。風雨にさらされた一年を経て、私たちはいかなる時よりも人類運命共同体の意義を深く感じています。私は国際上で新たな友人とも古き友人とも多くの対話を行い、多くのクラウド会議に出席しました。その中で最も話題に上がったのは、心を合わせて助け合い、団結して疫病に立ち向かうことです。疫病の予防・抑制の道のりは長く、その任務は重いものです。世界各国の人民が手を携えて、風雨の中を共にし、疫病という名の「暗雲」をいち早く蹴散らし、より美しい地球の建設に努めなければなりません。

 

 2021年は中国共産党建党100周年に当たる年です。百年の道のりは波乱万丈で、百年にわたる初心は月日が経つにつれて新鮮に感じられます。小さな赤い船が人民の重任、民族の希望を乗せ、急流や早瀬を乗り越え、荒波を抜けて、中国を安定的に遠くまで導く巨大な船にまで成長しました。「千秋偉業」を胸に、百年目の風采を解き放ちます。私たちは人民を中心に、初心を忘れず、使命を心に刻み、風に乗り波を切り、帆を上げて遠方を目指すことを堅持し、中華民族の偉大なる復興を必ずや実現させます。

 

 「二つの百年」という歴史的岐路に立ち、全面的な社会主義現代化国家建設の新たな道のりが幕を開けようとしています。道のりは長くとも、奮闘あるのみ。私たちは奮闘を通して、イバラの道を切り開き、多くの山や谷を乗り越えてきました。私たちは引き続き奮闘し、勇ましく前進し、より輝かしい未来を作り上げなければなりません!

 

 街に明かりが灯る今この頃は、家族団らんの時でもあります。新年の到来を前に、山河が美しくあることと、国民の安泰を祈るばかりです!皆さんの新たな一年が順風満帆で、吉祥と幸福に満ちたものとなることをお祈り申し上げます!

 

 ありがとうございました!

 

講評

もはや恒例と云っても良い新年賀詞。これがないと新年が始まらない。今年も相変わらず使用感の一切ない執務室をロケ地となし、紅と金が輝き、照明でビカビカに照らされたパチ屋のような新華門をくぐるカットから映像が始まる。

 

赤電話を探る 


そしてお出ましになる我らが御大。写真や本が不自然なほどカメラ目線で並んでいるが、それはよしとする。私がいつも気になるのは上の写真向かって左にこれ見よがしにおいてある紅い電話機。奥の白い電話は内線だろうが、わざわざ紅くしているということは何らかの意味があるはず。

 

イメージ的に、紅い電話機といえば国家間のホットラインが予想される。そうだとすると、2台おいてあるのはどこにつながるものなのか。大国同士なのでまずはアメリカが頭に浮かぶが、調べた範囲では軍事用ホットラインがつながっているのみで、首脳同志のそれではないようだ。となるとロシアということになろうが、残った一つはどこにつながるのだろうか。まさか自宅につながっているわけでもあるまい。

 

もう一つの可能性としては「红机子」あるいは単に「红机」とも呼ばれる一部高級幹部間の通信に使われる電話回線という説だ。これは遠藤誉氏が著書のなかで何度か解説している存在で、チャイナウォッチャーのなかでも知る人が少ないという。だから「赤い機械」などと誤訳されることも多いらしい。遠藤氏はある幹部の自宅で紅い電話を見つけ、あれはなんですかと尋ねたところ「なんでもないあるよ」とササッと布で隠されたというエピソードを著書の中で披露している。おそらくは機密保持のためにあまり人に見せてはいけない存在であったのだろう。そして電話機本体のみならず、その回線まで傍聴を防ぐために専門の機関により運営されていたという徹底ぶりだ。習主席は高級幹部どころか最高幹部なので红机子がオフィスに設置されていてもなんら不思議ではないが、上記の秘匿性という観点から云うと、映像に登場させて見せびらかすというのも不自然ではないか。

 

というわけで結局あの紅い電話はなんなのかわからないが、たぶん、ホットラインを撮影用に2個ほど置いてみました!的産物なのではないかと予想する。だが、そのホットラインもこういうふうに見せていいの?


公約はどうなった

国内総生産(GDP)が100兆人民元云々はご同慶の至りだが、2010年比でGDPを倍増させる公約はどうなったのか。おそらく上記の数字は名目GDPであり、倍増させるのは実質GDP だったと思う。名目GDPだと2020年以前に倍増を達成しているし。鑑みるに経済の専門家のお歴々が「2020年の倍増達成は無理!」と言っていたこともあるし、やはり倍増は達成できなかったのだろう。それに、もしも達成していたとしたらもっと盛大に「そして今年は……なんとGDPが2010年比で倍増しました!」ぐらいやりそうなのに、さらっと「100万元に達しました(10年比で倍増とは言ってない)」と流しているところを見ると、残念ながらダメだったと思われる。確かにコロナや災害があったからしょうがないよね。こんな事を云ってはなんだが、その殆どを自然災害のせいにしてしまった大躍進政策に比べればぜんぜんOKだろう。

 

ちなみに2020年の賀詞では「2020年は一里塚の意義がある年となります。我々は小康社会(いくらかゆとりのある社会)を全面的に達成し、一つ目の「百年の奮闘目標」を実現します」と述べられているが、今年は「2020年は、全面的な小康社会の建設において偉大かつ歴史的な成果を得て、貧困脱却の堅塁攻略戦において決定的な勝利を収めた年でした」とトーンが落ちている。「偉大かつ歴史的な成果」は得たが、「達成・実現した」とは一言もいっていないのだ。


そしてその小康社会と並んで達成すべきは農村部の貧困脱却だが、「現行基準における農村貧困人口1億人が全て貧困から脱却し、832の貧困県から「貧困」のレッテルが全て取り除かれました」とのこと。「現行基準」というのがイマイチわからないが、人民が豊かになるのは良いことだ。……まさか基準を改定して達成したことにしてないよね?


だが、拼多多のような安価なネット通販が農村部で支持を得ているのであまり貧困を脱したという実感がない。農村が発展したとしても、それ以上の速さで沿岸部、都市部が発展すれば、相対的にはあまり変わっていなことになるが、もしかしたら今の中国はそういう状況かもしれない、と新年のめでたい雰囲気に水をさしてみる。

 

姿勢と表情に関する考察

昨年の新年賀詞は、わりと習主席の動きが激しかった。といっても別に歩き回ったり机をぶっ叩いたりするわけではなく、座りながら手を組んだり、解いたり、硬い表情になったり、柔和なお顔をしたりと、見ていて「あ~香港問題はやっぱり……」などと考えられたのだが、今年は動きが少なかった。手は組んだままで、主に表情に注力していたように感じる。

冒頭のシーン。にこやか。

コロナに関する講話中。厳粛な表情。

経済に言及するシーン。少し体を動かしつつ、声も張っている

画像だからイマイチ判然としないが、映像だと抑揚をつけて話している様子や、顔の動きがよく分かる。視覚聴覚的効果を狙い、きっちりと監修された上での動きだと思われるが、先に述べた通り今年は控えめ。参考までに昨年の新年賀詞における習主席を見ていただこう。シーンは話題が軍事に及んだ時。

 

拳をしかと握りしめ、表情は厳粛そのもの。これほど表情や動きが多彩だと習主席の考えというか感覚もある程度は推し量ることができるものの、今年のようなおとなしいさまではそれもかなわない。去年は香港問題に話題が及んだ時、顔が一瞬引きつったように見えるシーンがあった。それだけで「【悲報】習近平マジギレ」などとアホみたいに騒ぎ立てたくはないが、それまでは一貫して落ち着いた様子だったのに、香港についてのときだけそうなるというのはやはり根に持っていらっしゃるような気がする。2020年はテロリストたちに法治で勝利を収めたから安心ですね。


おわりに

2021年の新年賀詞はトーンが抑えめだと感じられた。それはやはり2020年にGDP倍増を達成し、党成立100周年を勝利の錦で飾りたかったところだろうが、新型コロナウイルスによって経済が低調になってしまったからであろう。それを大々的にアピールすることに文量を割くはずであったろうが、実際は軽く触れられるだけで終わっている。その代わりといってはなんだが、コロナ対策や災害対応にあたった人々に賛辞を送っている部分が冒頭の多くを占める。これはすばらしい。医療関係者のみではなく、感染拡大に携わる人々を讃え、「向所有不幸感染的病患者表示慰问!向所有平凡的英雄致敬!」とまで言ってくれている。パフォーマンスにすぎないかもしれないが、それでもさらっと「この年末年始にかけても、医療、保健所、介護の現場で昼夜を問わず、ウイルスとの闘いに御尽力いただいている全ての皆様に、改めて心より感謝を申し上げます。」と言うだけよりは思いやりが感じられる気がする。


そしてもちろん、党成立100周年にも触れている。コロナから回復して成長を始めた中国だから、きっとめでたい100周年の日を迎えられるはずだが、その後が問題である。とりあえず100周年を目標に邁進してきたので、迎えたら燃え尽きてしまいそうだからだ。そうすると2022年の賀詞がネタ切れのような感じになってしまいそう。そうなるとチャイナウォッチャーとしては非常に面白くないので、習主席にはぜひお力を発揮していただきて中国をより魅力ある国、富強の国へ導いていただきたいところ。


さて、いろいろと考察してきたが、新年早々一人でこんなことをやっているのも寂しい。孤立は中国オタクの命運のようなものだと勝手に思いこんで平気なふりをしているけれども、2021年になって初めて見た人の顔が毛主席、初めて聞いた人の声が習主席というのはどうなんでしょう。紅衛兵だったら喜ぶべきやいなや。