接过雷锋的枪 | 雷兄さんの銃を受けつごう

2021/02/28

1960年代 紅歌

中国語歌詞

接过雷锋的枪
词:朱践耳 曲:朱践耳 1963年
 接过雷锋的枪 雷锋是我们的好榜样
接过雷锋的枪 千万个雷锋在成长
学习他 对人民无限忠诚
学习他 对敌人毫不留情
学习他 为祖国献出青春
为了共产主义奋斗终生
毫不利己 专门利人
做一个永不生锈的螺丝钉
谦虚谨慎 永远革命
做一个毛主席的好学生
※「无限忠诚」は「无比忠诚」とも。

日本語訳詞

雷鋒兄さんの銃を受けつごう
作詞:朱践耳 作曲:朱践耳 1963年
雷鋒兄さんの銃を受けつごう 兄さんはぼくらのよき見本
雷鋒兄さんの銃を受けつごう ぼくら千万の新雷鋒は育つ
学ぼう 人民に対する無限の忠誠
学ぼう 敵を許さないつよい心
学ぼう 青春を祖国にささげ
共産主義のために闘いぬいた一生
すこしも利己的でなく 人民に尽くす
永遠にさびることのないねじくぎとなろう
謙虚で慎ましく いつまでも革命的な
毛主席のよき生徒になろう

☆概要

多すぎて何曲目かわからない雷鋒頌歌。他の歌曲もそうだが、青少年向け歌曲とは思えぬほどの戦闘的歌詞と、党のために死ぬ共産主義戦士に育て上げるべく洗脳してくる感じが魅力といえる。

 

前にこのブログで紹介した「我们要做雷锋式的好少年」は「ん?」と思う箇所もあるがまあまあ普通の童謡に聴こえないこともない。だが、こちらはもっと軍歌寄りと言えるだろう。だってタイトルからしてすごい。「銃を受けつごう」って。戦うことは決まってるんだね。

 

雷鋒に関していろいろ書いてきたためネタ切れの感があるが、とりあえず曲調から見ていこう。

 

語録歌と中国童謡のリミックスのような趣を持つ直線的かつシンプルなメロディーだが、その中にも「学习他 对人民无限忠诚……」で低く抑えつつ「为祖国献出青春 为了共产主义奋斗终生~」と盛り上がっていく技巧的な部分もあり、なかなかの良曲と言える。


歌詞については上にも書いたがやっぱり戦闘的。ほかにもとりあえず祖国に青春を捧げさせ、隙あらば一生をも革命に捧げさせようとしてくるところが非常に60年代中国らしい。

 

ただし、そんな過激な方に目が向きがちだが、「毫不利己 专门利人 做一个永不生锈的螺丝钉 谦虚谨慎」など、「老三篇」を引用しつつ道徳観を教え込んでいるところも見逃せない。実際にこの歌を聴きながら育った新雷鋒たちは利他的な見地から活動し、今の中国では考えられないほど善良な心を持っていたようだ。80年代以前の中国では財布を落としてもゼッタイに返ってくるし、文革中でさえも駅前にはボランティアで靴の修理や金物の補修をしている人々がごった返していた、と当時を経験したかつての新雷鋒から聴いたことがある。財布を落としたら返ってこなさそう、何かを修理する必要性につけこんでボッタクってきそうな今の中国とは別の国のようだ。雷鋒のようなバカ正直がいなくなったのは哀しいけど、それ以上にバカ正直だと痛い目を見る社会はもっと哀しい。

 

尤も、この新雷鋒たちはあまり教育を受けていないから党の指示に疑問を持てない。だから敵と認められた人に対する扱いは善良とか道徳とかの言葉とはまったくの逆だったことは述べておかねばなるまい。

 

「永不生锈的螺丝钉/永遠にさびることのないねじくぎ」とは見慣れない表現だが、これは雷鋒同志の「我愿永远做一个螺丝钉」という言葉を敷衍したもの。ねじくぎの一個一個はちっぽけなものだが、一つ欠けただけでも全体に綻びが生じてしまう重要なものだ。革命のフレームとかエンジンになりたい!ではなく自分の持ち場を精一杯守るという感情が込められている雷鋒同志らしい文だ。「車の部品で例えれば潤滑油です!」というクリシェに嫌気がさしたら模倣してみてはいかがだろうか。


この歌曲の作者である朱践耳同志はほかに「唱支山歌给党听」などの名曲も手掛けている……が、どうも紅歌畑の人間ではないようだ。どちらかというとクラシック音楽などの西洋音楽が専門であるようで、文革が終わってからはむしろそっち方面に力を注いでいる。クラシック音楽家として何度も来日するなど、その界隈ではかなり高名な人だったようだ。弘法筆を選ばずというが、この同志もまさにそうで、本曲も「唱支山歌给党听」も封建主義の香りがするクラシック音楽家という職の者が作ったとは思えない紅さを持っている。だが、クラシック音楽をやりたかったであろう朱践耳同志がどんな気持ちでこれを創作したかはわからない。イヤイヤ作ったのか、喜んで作ったのかは知らないが、とにかく革命性を持っていて、かつ明るくステキな旋律を持つこの曲は名曲だ。

 

☆動画