中国語歌詞
日本語訳詞
☆概要
新年度、新生活、そこに水を差す税金。また嫌な季節がやって来た。還付金とか給付金に関してはだんまりを決め込み、聞いたとしてもロクに教えてくれないのに、ご丁寧に御税金のお支払いのお日にちは膨大な書類の束を送りつけてお知らせしていただけるのだから大したものだ。それを無視していると職場に連絡してまでキリトリを行うという。どこのヤクザかと思ったよ。
一番訳わからないのが自動車税だ。 去年、軽貨物車から軽乗用車に乗り換えた。そしたら初度検査から13年経過しているから税金12900円だとか。それまで乗っていた、毒のようなニオイの排ガスとクーラントとデフオイルを垂れ流していた30年前の軽トラに比べれば13年前のポンコツ車でも幾分環境に優しく、道路も傷めないと思うのだが、12900円?なんで?無産階級のなけなしのカネを吸い取るよりも肥え太った上級国民どもから徴収したら如何。
スズメの涙の給料から更に持っていかれるので思わず愚痴ってしまった、閑話休題。
さて、今日はみんな大嫌いな税金に係る中国ソングを日本語訳してお届けする。 その名も「中国税务之歌」。うん……そのまんまですね。
創作されたのは2018年。歌を聴いたり百度百科を見れば、党の十九大に啓発されて創作されたようだ、という事はわかるのだが、なぜ今まで税務署ソングはなかったのに十九大以降に急に作ったのかという動機がわからない。十九大以降に環境保護税という税目が追加されているというイベントがあるにはあったが、1994年の税制改革などと比べれば小物である。しかも曲中で環境保護税に一切触れてない。となると十九大関連用語(不忘初心,牢记使命、强国、复兴、信仰などなど)がやたら入れてあることからもただの習主席ゴマすりソングなのだろうか。
動画のMVから。「習総書記は『"緑の山河は国家の金山銀山である"という理念を樹立し、また実践していかなければならない』と指摘なされた」と書かれている。どこかで見たような語録風味があっていいですね。 |
来歴のよくわからん曲だが、その曲調は安心感がある。最近の中国ってこういう落ち着きが好きな気がする。個人的には、曲自体が速めのテンポなのだからもっと軽快で高音主体の音楽が良かったなぁと思う。
「我们是共和国的税务人~♪」のところなどが、ほのかに强军战歌と似てるなどと思っていたら作曲者が同じ印青さんとのこと。彼はなかなかの大物だと思うのだが、それにしては流行ってないね、この歌。曲はクセのない晴天のような軍歌調だから受け入れられやすいと思うのだが、歌詞かあるいは税務という地味な素材そのものが足を引っ張っているということだろうか。
歌詞は集団作詞とされている。文革期によく見られた手法だが、21世紀になっても見かけるとはね。みんなでやってなあなあになってしまったのかは知らないけれど、歌詞のクオリティはお世辞にも高いとは言えない。とりあえず十九大の用語を散りばめました、とりあえず税に関すること入れました、みたいな表面的な歌詞にとどまっているが、そのやっつけ感やよし。
また、中国人の十八番である四字熟語連打も「忠诚担当 崇法守纪 兴税强国 初心不忘」と入っているのは評価ポイント。訳すときにめんどくさいからやめてほしいけどね。
翻訳で云えば、「为民收税」をどう訳すかも悩みどころであった。そのまま「民のために税を徴収する」ではなにか悪事のようなニオイがおこる。徴収というのあまり良い言葉ではない。では徴税はどうかと思ったが、そうすると上の「为国聚财」と平仄を合わせたような日本語でなくなってしまうのが嫌だった。だから苦肉の策として「税を収める」という表現になった。ふつうは「納める」だが、この曲は徴税者の視点。だから「収める」でも問題あるまい。たぶん。ちなみに「为国聚财 为民收税」というのは国家税务总局(中国税务)のスローガン。
歌詞の最後をシメるのは「前进的号角在征途上吹响 信仰的旗帜在新时代飞扬」というバリバリの軍歌節だ。事務作業が主だと思われる静の税務署と、「前進の号令が征途に響き渡る」という動の、しかも軍隊みたいな表現は合わないと思うのだが。
またMVに解放軍陸軍や空母が出張ってくるのが面白い。いや、もちろん「あなた方の納めた税金がこうした富国強兵に役立っているのですよ」というアピールであることはわかるのだが、税務職員さんたちの軍服っぽい制服や敬礼姿と相まってもう軍歌としか思えない。さらにダメ押しとばかりに作曲者は軍歌の名手ときた。結局、どっちつかずとなり、凡作軍歌みたいになってしまったといえよう。「え~税務署のテーマがあるの?!」という希少性で聴くべし。
中国の税務署なんかイヤな予感しかしない。汚職と賄賂ともろもろの悪事が溢れてそうなところだが、実際のところどうなのだろうか。本当に賄賂で脱税やらなんやらを隠せるのかは知らないが、本邦は国税庁のページに掲載されている小杉直史氏の論説によると、少なくとも縁故採用は厳に戒められているようだ。その論説には他にも興味深い事実が多数掲載されている。例えば税務職員試験の倍率はなんと50倍(公務員全体は36倍だそうな)。みんなわざわざ税務職員になりたがるということは、やはりなにか袖の下を貰えるんじゃないの?と勘ぐってしまう。
☆動画
国家税务总局のホームページに掲載されている動画を転載。リンク先の「点击下载视频」をクリックすると同じものをダウンロードすることができる。何?著作権フリーなの?
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