在希望的田野上(希望あふれる田野に)

2020/08/18

1980年代

中国語歌詞

 在希望的田野上
词:陈晓光 曲:施光南 1981年
我们的家乡 在希望的田野上
炊烟在新建的住房上飘荡
小河在美丽的村庄旁流淌
一片冬麦 那个一片高粱 十里哟荷塘 十里果香
哎嘿呦 哎嘿咦嘿呀
嘿 我们世世代代在这田野上生活
为她富裕为她兴旺
 
我们的理想 在希望的田野上
禾苗在农民的汗水里抽穗
牛羊在牧人的笛声中成长
西村纺花 那个东港撒网 北疆哟播种 南国打场
哎嘿呦 荷呀喝咦嘿呀
我们的世世代代在这田野上劳动
为她打扮为她梳妆
 
我们的未来 在希望的田野上
人们在明媚的阳光下生活
生活在人们的劳动中变样
老人们举杯 那个孩子们欢笑 小伙儿弹琴 姑娘歌唱
哎嘿呦 哎嘿咦嘿呀
嘿 我们世世代代在这田野上奋斗
为她幸福为她增光 为她幸福为她增光
※「哎嘿呦 哎嘿咦嘿呀」、「哎嘿呦 荷呀喝咦嘿呀」は掛け声のようなもの。

日本語訳詞

希望あふれる田野に
作詞:陳暁光 作曲:施光南 1981年
我らのふるさとは 希望あふれる田野に
新しい我らの住まいの上に炊煙はたなびき
美しい村のそばを小川が流れゆく
一面の小麦畑 広がるコーリャン畑 十里のハス池 十里漂う果実の香り
我らは世世代代ここに暮らす
母なるこの地を富ませ 時めかせるために!

我らの理想は希望あふれる田野に
稲は農民が流す汗とともに生い育ち
牛や羊は牧夫が笛の音聴いて肥え太る
糸紡ぐ西の村 網打つ東の港 種まく北の大地 脱穀する南国
我らは世世代代ここで働く
母なるこの地に開発という名の装飾を施さんがために!

我らの明日は希望あふれる田野に
うららかな陽光が皆の生活を照らし
その生活は皆の働きで上向いてゆく
老人たちは祝杯を挙げ 子どもたちは明るく笑う 琴弾く青年 歌う少女たち
我ら世世代代ここに闘う
母なるこの地に幸せと栄光をもたらすために!

☆概要 
 
中国のファーストレディーにして国民的歌手である彭麗媛女史の持ち歌であり、当時20歳にも満たなかった彼女を一躍スターダムに押し上げた曲。他にも、その美声で歌い上げた歌曲は数多くあるが、彭麗媛女史を代表する歌曲は何かと言われれば間違いなくこれ。百度百科を参照すると、1981年に創作された歌で、彭麗媛女史がこれを初めて歌ったのは1982年とされる。従って彭麗媛女史が原唱(オリジナル版)というわけではなく、原唱は別の方のようだ。

日本での彭麗媛女史の印象は「国家主席の奥さん」(あるいは「誰それ?」)程度だと思うが、実は超有名歌手。今でこそ「習近平主席の奥様」であるが、ちょっと前までは逆に習主席が「歌姫・彭麗媛の夫の共産党員」であったと中国人から聞いたことがある。それほど彼女の知名度は高かったのだ。そしてこの曲は、今では彭麗媛のテーマのような扱いといってよいだろう。

作曲の施光南は当サイトでも紹介した「假如你要认识我」も創作している。どちらも明るくて軽快な曲で、それ以前の作品群とは一線を画する。文革期の歌曲も明るいけれど、それはさながら「ガンガン照らしてくる太陽」で、本曲や「假如你要认识我」のような「あたたかな陽光」とは異なっている……気がする。

曲調としてはまさに「楽しげ」という表現が似合う。第11期3中全会にて農村改革の青写真が描かれ、それまでの極端な平均主義が克服されようとしていた最中に作られたこの曲は、当時の改革開放に歩みだす農民たちの心の動きを正確に作品に反映したと言えるだろう。「我们世世代代在这田野上……」からの早口の感じも、新時代をこの土地とともに生きてゆこうという決意を表しているような雰囲気があるうえ、曲にメリハリがついてとても良いものだ。尤も、この歌に描写されるような土地の生まれの人は、決意もなにも、軍に入隊するか大学に合格するかしないかぎり嫌でも世世代代その土地に暮らすことになりそうである。

翻訳にあたっては「田野」の訳に相当迷った。どうも「田畑」ほど開拓されておらず、「野原」ほど草茫々ではなさそうなニュアンスを持つようだ。人家と畑地があるが、まだ開拓する余地があるというような土地をテーマとしていると思うので、それに該当する単語を探すのが大変であった。で、結果として「田野」をそのまま使うことにした。田んぼも野原も両方ありそうだからこの単語が一番あっていると思うがいかがだろうか。

「世世代代」という中国人がよく使う表現は、素材の味ということで敢えてそのまま使った。全く意味が汲み取れなければ翻訳するが、字を見れば中国語に馴染みのない方にもなんとなくわかっていただける語だと思う。日本語にすれば「代々」とかだろうか。「世世代代」のほうが仰々しくてステキ。

ふつう、「母なる」と来れば党!……なのだが今回は「この地」。土地を擬人化していて、「她」と呼称しているのでそう呼ぶのは問題ないと思うが、党以外に「母なる」という枕詞を使って不適切でないかちょっと心配だ。

全体的に素晴らしい曲だが、惜しむらくは「紅」要素ゼロなところ。せめて「党」とか「贫下中农」という一言が入っていれば……と思わない時はない。それでも彭麗媛の美しい声で歌われるこの曲が素晴らしいことには変わりはない。ぜひ一度、彭麗媛演唱のバージョンを聴いていただきたいと思う。

☆動画