幻の華主席讃歌・祝酒歌(祝酒の歌)

2020/08/22

1970年代 華主席 紅歌

中国語歌詞

祝酒歌(原版)
词:韩伟 曲:施光南 1979年
美酒飘香啊歌声飞
朋友啊请你干一杯 请你干一杯
胜利的十月永难忘 杯中洒满幸福泪
来来……
华主席掌舵位
万里山河尽朝晖
舒心的酒啊浓又美
千杯万盏也不醉

杯中的美酒啊放光辉
映出了一片好山水 一片好山水
赶赴前程似锦绣
人人胸中春风吹
来来……
瞻未来无限美
抓纲治国战鼓擂
美酒浇旺心头火
燃得斗志永不退

今天啊畅饮胜利酒
明日啊上阵劲百倍
为了实现四个现代化 愿洒热血和汗水
来来……
目标远大步追
胸怀解放全人类
待到理想化宏图
咱重摆美酒再相会

日本語訳詞

祝酒の歌
作詞:韓偉 作曲:施光南 1979年
美酒の香りただよい 歌声ひびく
友よ乾杯しよう 乾杯しよう
永遠に忘れられぬ勝利の10月 幸せの涙は杯を満たしゆく
ラララ……
華主席 舵を取り
万里の山河に光は満ちる
濃厚で美味な心地よい酒はいくら飲めども酔いはしない

杯に注いだ美酒はきらめいて
美しい景色を映し出す 映し出す
輝く前途に赴く人民の
胸には暖かな春風が吹く
ラララ……
限りなく美しい未来を仰ぎ見て
「抓綱治国」の綱領は我らを前へと導く
美酒は我らの意気に火をつけて
燃える闘志は決して退かない

今日は勝利の祝杯に酔いしれ
明日は百倍の士気で臨もう
「四つの現代化」を実現する為 血と汗を流して励もうではないか
ラララ……
遥かな目標に向け前進し
胸に抱くは全人類の解放
いつか理想が遠大な計画となるのを待ち望む
我ら美酒を並べてまた会おう

☆概要
現代でも公式行事などでたまに歌われる曲の、消されてしまった原版(オリジナルバージョン)。本来は四人組打倒と華主席の路線を讃える歌だったのだが、肝心の華主席があっさりと主席じゃなくなってしまったので、四人組打倒のお祝い感を残しつつ歌詞が改変されてしまった。それが今の「祝酒歌」である。「文革終わったけど大々的に祝うのもねぇ……そうだ四人組打倒にかこつけて祝おうぜ!」という空気を感じる。
 
在希望的田野上」、「假如你要认识我」などの80年代を代表する歌曲を手掛けた名作曲家である施光南により生み出された曲ゆえ、四人組打倒と華主席の路線を祝うにふさわしい明るい曲調を持っている。ララライライ~ララライライ~というメロディーも印象的で良い。でもこのバージョンは歌詞が戦闘的かつ文革的すぎて施光南とあまり相性が良くないと思う。遺憾ながら、施光南っぽさが出ているのは歌詞改変後の穏やかなほうであると言わざるを得ないだろう。
 
華主席版は、改変後のバージョンと比べると、「紅」パワーが格段に強い紅歌マニア垂涎の一曲。「华主席掌舵位」という歌詞がいかにも「毛主席の正当な後継者である」という印象をアピールしているようでたまらない。他にも「为了实现四个现代化 愿洒热血和汗水」や「胸怀解放全人类」などという継続革命戦闘態勢全開リリックが出てくるのでもう最高。紅歌にとって、華主席の時代は最後の晴れ舞台だったかもしれない。この曲は、そうした時代に、歌詞を変えられるという徒花の運命を背負いつつも咲いた名紅歌であるといってよいだろう。
 
歌詞中の「抓纲治国」は華主席の打ち出した綱領。それは毛主席の「阶级斗争是纲,其余都是目」という最高指示を基に階級闘争を強調しつつ安定を志向するものであった。日本語訳すると「かなめ(階級闘争)を把握し、国を治める」といったところだろうか。翻訳に際してはそのまま「抓綱治国」としたほうが座りが良いと感じたので、敢えて訳さなかった。
 
翻訳にあたって、「美酒浇旺心头火,燃得斗志永不退」のところがどうもうまく訳せた気がしない。他にも「輝く」的な表現や「美酒」という単語が何回も出てきたので、カブらないようにかなり気を使った。
 
あと、歌詞中に「いつか理想が遠大な計画となるのを待ち望む」というビミョーな日本語訳があるが、いちおう原文と同じテイスト。「理想が実現するのを~」なら分かるが、「理想」と「遠大な計画」って同義に近いんじゃないの?そう考えて調べてみると中国人もおんなじことを思っていたようで、「理想と宏图は一緒だよ!言い間違いだろ」というお怒りの寄稿が上海文化出版社咬文嚼字1995年第8期に「“理想”如何化“宏图”」というタイトルで載っていた。
 

☆動画
 
歌詞字幕が二簡字で表記されている面白い動画。

二簡字とは、簡体字を更に簡略化しようというもので、文革以前から建議されていた。たとえば動画タイトル「祝氿歌」の「氿」は酒という字の二簡字。1977年頃から試験的に運用され、「铁辺(道)兵」とか「付(副)总理」など表記されたが、「逆に分かりづらい」という身も蓋もない意見で1980年代中盤には廃止されている。我らが華主席と同じく短命に終わった悲しき文字たち。