中国語歌詞
日本語訳詞
☆概要
今回翻訳したのは映画『大海在呼唤』の主題歌。1980年代に大ヒットした映画で、この時代を過ごした中国人の大半は知っている。「中国語の歌、歌えるよ~」とか言って「社会主义好~社会主义好~♪」とやるとゼッタイ、形容しがたい面持ちになって気まずくなってしまうのでこれを歌うようにしている。政治思想がなく、きれいな歌なので、紅歌と比べれば抜群の食いつきを誇るコミュニケーションツールのような歌。
映画の方は見てないので知らない。パッケージには海軍の白い制服を着た御仁が写っているし、主題歌のタイトルがこれなので十中八九、海に関する映画でしょうという粗い推測しか出来ない。 いちおう、女声で歌われているので女性視点で語っているような歌詞にしたが、パッケージに写る人をイメージして創られた曲だとしたら、ゴリゴリのおっさんが「海で生まれて 海で育ったの♥」と言ってることになり、だいぶオカシクなる。まず映画を見てから翻訳したほうがいいね。
文革期の歌にどっぷり浸かっていると、こういった郷愁を感じさせ、かつ暖かな歌詞が沁みる。どこまでも広く続く大海原と晴れ渡った空が思い浮かび、潮風のにほひが感じられる……と言えれば良いのだけど、わたくしはどちらかといえば「山よ、我がふるさと」派なので今ひとつイメージが浮かばない。そんな分からず屋にも伸びやかなメロディにのせて伝わる「大~海啊、大~海♪」の美麗さはしっかりと伝わるので正統派名曲と言えるだろう。
わたくしは紅衛兵なので、「大海」と来れば「航行靠舵手」しかない。子曰、知之為知之、不知為不知。是知也……よく知らない歌を得意げに長文で解説してボロが出るといけないので、解説は以上としておこう。
そんなよく知らぬ歌を日本語訳しようと思ったのは、別にこの歌が好きとか、誰かに頼まれたとかではなく、大学時代の恩師の愛唱歌だったことを思い出したから。その同志とは一緒に紅歌を歌って大盛りあがりしたものだが、歌い終わると決まって「政治的な要素がない曲のほうがいいね」と反省したような顔をしながら仰っていた。いや、二人で楽しくオン・ステージしたじゃないの!と思ったが、文革を経験していることもあり、紅歌に対しては複雑な感情が巻き起こるのだろう。だから政治的でなく、透き通ったメロディを持つ本曲は二人で歌って楽しむにはぴったりだった。そんな故事を寒風吹きすさぶなか、ふと思い出したので、日本語訳したうえでわが老师に捧げるものである。そしてもちろん、ここを見てくださっている皆様にも。
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