中国語歌詞
日本語訳詞
☆概要
今回の和訳は国慶閲兵などの際にも歌われる名作中国軍歌「人民军队忠于党」。歌詞の内容からけっこう古い軍歌と思っていたが、1960年作とわりと新しめ。文革時期よりも前に作られているため、ゴリゴリの毛主席連呼があるとか、反動派を殺す決意を述べるとかそういう尖った要素は無い。しかし、この曲も文革の洗礼からは逃れられなかったようで、しっかりと歌詞が改変されたバージョンが存在している。その紅衛兵大歓喜の「人民军队忠于党(文革版)」は先に日本語訳したので物好きな方はぜひ見ていただきたい。
タイトルにもある「人民军队」というのはあまり見ない表現だが、歌詞の内容などから察するに「人民の軍隊」ということだろう。これを「人民軍隊」と訳すと途端に北の暴れん坊将軍が治める国のオーラが出て来てしまう。なぜ人民の軍隊ということをアピールするかと言えば、それまでの中国における軍隊は貴族階級が持つ兵隊や、くそ地主共の私兵であって、人民のための軍隊など存在しなかったからである。粗暴で人民の害にしかならない連中こそが軍隊であったので「好人不当兵(良い人は軍人にならない)」という言葉があったほど。そこから救いの星☆ミ共産党が来てくださって、人民はようやく自分たちの子弟からなる人民による人民のための兵隊を持つことが出来たというわけだ。しかし現実は厳しい。たしかに人民が寄り集まって人民解放軍を充足しているが、人民の軍隊というより党の軍隊と言ったほうがしっくり来る。本人たちもそう言ってるし。というわけで正確を期すならこの歌のタイトルは「党的军队忠于党」あるね。
曲調は中国軍歌の例にもれず明るく軽快。私の感想がいつも「明るく軽快」しか無いほど中国軍歌は明るく軽快。よく言えば様式美、悪く言えばありきたり。それでもストーリー仕立てになっている歌詞を引き立てている良い歌詞であると思う。 一番で言えば「从无到有靠谁人~♪」のところから曲調が少しだけ変化してから満を持しての「ウェイダディゴンチャンダァ↑~ン、ウェイダディマオゾォドォ~ン!」である。これだけやれば人民の脳裏に誰を頼ればよいのかしっかりインプットされるはずである。そして余計にチャカチャカピーヒョロと音がなっていないのも良い。「在希望的田野上」のような歌も中華風味があって良いものだが、少ない音でしっかりと旋律を作っているのは軍人気質を感じさせる。
歌詞については先程記述したようにストーリー仕立てとなっていて、井崗山から長征、延安、そして新中国に至るまでの過程に、旋律を楽しみながら思いを馳せることができる。ただし、個人的な感想であると断りを入れておくが、歌詞は文革版のほうが格段に良いように思われる。「毛主席を呼び捨てにするとは!けしからんぞ!」といった思想的な理由は置いておくとして、やはり最後は万歳共産党、万歳毛沢東でシメてほしかった。そういうふうに歌っているバージョンも有るにはあるが、いちおうオリジナルバージョンとしては最後も「伟大的」だ。最後は現在のことをテーマにしているのだから、「ここまで導いてくれた共産党、毛主席万歳!」というオチがほしい。そちらのほうが人民解放軍の将士にとっても感慨ひとしおであろう。そして、文革版の翻訳に詳述してあるが、井崗山に「八一军旗」が翻るというのは時代考証ミスの可能性が濃厚だ。井崗山に紅軍が居たのは1930年までで、八一軍旗が制定されたのは1949年である。翻っていたのは中国工農紅軍の旗であろう。気になる点はこの2つ。たった2つということもできるが、名曲ゆえ、1点の曇りもない傑作であってほしかった。
日本語訳についてはことばとして発音した時の心地よさと軍歌らしさを重視したが、硬い文体になりすぎてしまった感が否めない。しかし最近、私はこういった硬い文体のほうがむしろ得意ではないのだろうか、などと思い始めてきたので「まぁいいか。没问题!」ということで改変せずにアップロードした。柔らかい言葉を意識して選んで翻訳した「我站在草原望北京」などは今見てもヒドイ出来なので、これからもちょっと硬い……というか漢文訓読調でいこうと思う。いや、こういった歌だって一応、漢の国の文なのだからむしろそういう方法のほうが適合しているのではないか……などと考えさせてくれた「人民军队忠于党」に谢谢!!
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