爹亲娘亲不如毛主席亲 (父母より親しい毛主席)

2020/07/06

1960年代 紅歌

中国語歌詞

爹亲娘亲不如毛主席亲
劫夫:詞曲 邢台民谣 1966年
天大地大不如党的恩情大
爹亲娘亲不如毛主席亲
千好万好不如社会主义好
河深海深不如阶级友爱深
毛泽东思想是革命的宝
谁要是反对它 谁就是我们的敌人!
*「阶级友爱」は「革命友谊」と歌われることも

日本語訳詞

父母より親しい毛主席
劫夫:作詞作曲 邢台民謡 1966年
天地の大きさも党の恩情の大きさには及ばず
父母の親しさも毛主席の親しさには及ばない
どんな良いものも社会主義の良さには及ばず
いくら深い河海も階級友愛の深さには及ばない
毛沢東思想は革命の宝
歯向かう奴には 我らが相手となってやろう!


☆概要
1966年、邢台に地震が起きた。作者の劫夫(李劫夫)は自ら邢台へ赴くことを希望し、現地を視察した後に数十曲を書き上げた。そのうちの一曲が邢台民謡をもとにしたこの『爹亲娘亲不如毛主席亲』だ。あまり地震との関係性がよくわからない。地震の視察から帰ってきたらこんな仰々しい紅歌を作り上げるとは、当時誰も予想し得なかっただろう。「父母の親しさも毛主席の親しさには及ばない」この一文だけで相当な紅パワーを持っていると思う。

文化大革命中の大ヒットソングであり、「文革といえば」で思い出す曲の上位に入っているはずだ。張芸謀監督作品で文化大革命期の淡い恋愛を描いた『サンザシの樹の下で』でも主人公がこの曲を忠字舞をしながら歌うワンシーンが存在する。主に歌われたのは初期頃のようで、林彪反党集団が一掃されると、関わりがあったとされる作者の劫夫も失脚し、次第に歌われなくなったという。

「階級友愛」とは文化大革命期に顕著に見られる政治用語。当時は労農兵が最も革命的と看做されていて、もちろんブルジョワは反革命と看做された。そうした中で出身階級や階級間の絆、階級敵に対する恨みなどが強調された。非常に抽象的な概念。

訳出にあたって、日本語タイトルが長ったらしくなってしまった。こうした繰り返し系の歌曲は詞もクドくならないように訳したいところだが、原文からして大仰かつ過剰表現なので敢えてしつこいくらいに訳出してみた。


☆動画
映画『サンザシの樹の下で』のワンシーンより。この映画の主人公の父は労働改造所送り、母は再教育を受けさせられている。そういった環境で「父母の親しさも毛主席の親しさには及ばない」と歌っているのがなんとも言えなくなる。舞台左右の文字は『毛主席語録』の一番初めに出てくるもの。